【J1 1st第2節 川崎×湘南 後半】狙い通りの湘南と、それでも追いついた川崎

あれよあれよで土曜早朝。名古屋戦を迎える前に、湘南戦のまとめを。

森谷・狩野の2枚替え。悠と中野で縦の怖さを出す、も。

 

SHを二人とも交代。風間監督が二人を起用した本当の意図は図りかねますが、偽SH的な役割でバランスを取ろうとしていたんじゃないかというのが僕の考えです。チームが人数をかけて攻める形になった中で役割が今一つはっきりしなくなったような感じがあり、3失点を鑑みても交代は順当だったんじゃないかと思います。きついポジションですから、45分で交代することを前提にスタミナ配分を考えてもいいんじゃないかな…。

森本がトップに入って悠が右SHに下がり、中野は狩野とそのまま替わって左SH。中野は1.5列目から1対1の局面を作って仕掛けるタイプ、悠はDFラインの裏に抜けるタイプで違いこそあれ、サイドでシンプルに縦の怖さを出す布陣になったと思います。中野・車屋コンビは昨季後半に確立してて、カットイン好きな中野と外から追い抜く車屋の組み合わせは見ていて楽しいです。左の中野がチャンスを作って右の悠まで含めて3枚で決める、という形も広島戦で点を取った形で期待感あり。(ただ、森本が外に流れず中にいるタイプっぽいので悠が右にいることが多く、結果的にエウシーニョの決定力を使いきれてない感が…あるかな?悠が中に入っていって空いたスペースをエウシが狙う形は昨季結構あったと思うけど、この2試合あまりその形を見ていないような…)

湘南の前プレスが若干和らいだこともあり、川崎が押し込みました。クロスからの森本の決定機は決まらず。その他にも憲剛クロスから中野などいい形、決定機はありましたがモノにはならず、ゆっくりした展開に移行。

痛恨の失点はどのように生まれたのか

 

後半18分、湘南がキリノから藤田にチェンジ。これを機に前プレスが復活。川崎は再び組み立てが乱れるようになり、湘南がペースを戻します。プレスに対し縦フィードが結構ありましたが、森本が競り合いに勝てず案外おさまらない。それでもサイドに起点をつくり、何としても勝ち点3を取るという思いが川崎攻撃陣からは感じられました。

30分過ぎ、右サイド深くで大島と悠が絡んで組み立て、憲剛がクロスもはね返され、ロングカウンターを食らいます。憲剛と車屋がファーストディフェンスに行きますが、かわされて右サイドをえぐられます。結果的に、人数は足りていましたが中野が上がってきた湘南CB岡本を捕まえきれず、痛恨の失点となりました。

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大島と悠で右を崩しているところ。この段階で中野は合わせるべく中にポジション。

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憲剛クロス。このとき中野は右サイドにかなり寄っていって、組み立てに参加しようとしてました。僕の感覚では、ここまで行ききると戻るのはかなり大変です。

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はね返された後のファーストディフェンス。憲剛、車屋がかわされました。憲剛にはダメージが残ったようで、この後自陣には戻りません。大島・悠も同様です。中野はアーク手前にいます。

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エウシがボールアプローチするも、さらに外を使われます。中野と岡本スプリント中。

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ここで岡本が呼んでます。中野と車屋はダッシュ。

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大外に奈良がアプローチするも寄りきれず。エウシも戻りきれません。クロスがあがるまでに一瞬のタメがあったので、車屋も中野も一旦は湘南カウンターに追いつきました。しかしそれは同時に、視界から相手選手が消えるということでもあります。

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クロス。谷口が届かない絶妙のコース。車屋は無理すれば触れそうではありましたが、戻りながらの対応でしたのでスルー。確かにオウンになりそうな位置でした。中野が戻りきれているという判断があったでしょうか。中野は岡本の最後のダッシュに反応できず(あるいは車屋が間に合ってかき出すと思ったか)、マークを外してしまいました。

戻りながらのクロス対応は非常に難しいものです。クロスのタイミングを見ながら相手マークを外さず、オウンにならないよう処理するのは、待ち構えて対応するのとは訳が違う。しかも、車屋は前半から最前線に攻め上がる役割をこなし続け、チームの攻撃の核。中野も攻撃のオプションとして交代出場し、直前はFWのポジショニングから逆サイドまで顔を出していました。そういう状況下で長躯してこのようなクロスに対応するというのは、相当ひりひりすると思います。

風間フロンターレの攻撃におけるサイドハーフの多様な役割と、代償?

 

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2失点目(と、微妙だが3失点目も)に絡んだ森谷も、右サイドでありながらプレイエリアは非常に広かった。1点目、大久保のゴラッソの前に相手DFを釣ったスルーは、エリア左までボールをもらいに行った森谷によるものです。森谷にしても中野にしても、中盤の中央を務める選手だったことが関係しているのかもしれませんが、とにかく顔を出せれば自分のサイドでなくても絡んでいきます。そしてそれが、フロンターレの攻撃力、崩す力に大きく関与しています。その代償として、守備面の淡白さが生じている気がします。典型的なサイドプレイヤーであれば自分のサイドの上下動に専念します。ピッチの対角線を戻りながら相手のサイドプレイヤーをつかむなんていうのは、狂人の所業というか、猛烈なスタミナと強靭な意志がなければ不可能です。絶好調のときの長友がそれをやって、インテルサポから賞賛というより驚愕を集めていた、くらいのもんじゃないでしょうか。

4失点目のときは、前の攻撃で本来左の中野だけでなく、カバーにまわる(のが普通のチームなら通常なはずの)ボランチの大島・憲剛コンビも右に寄っていました。そうして数的優位を作って局面打開するスタイルですから致し方ないといえばそれまでですが、ネガがもろに出た失点といえるのではないでしょうか。

そういうわけで、サイドハーフが中央から逆サイドの攻撃にまで顔を出す攻撃スタイルをとるときには、サイドの守備の脆さは構造的なものとして捉えるべきじゃないか、というのが僕の思うところです。

これを解決するにはほんとにサイドハーフを45分で交代するものとして不退転の決意で走りまくってもらうか、ボランチがどちらかバランス見るしかないんじゃないかなぁ…

いや、中野後半出場なので言い訳はしづらいし、言ったらクロス手前のエウシの対応もどうかとはおもうんだけどさ…。自分がサイドの人間だったもんで、あぁいう戻りきれない系失点はねぇ…つらい。いい選手ばかりだと思うので尚更。

エドゥ、まさかのFWデビュー。執念のパワープレー

 

3度目のリードを許し、何としても点を取るしかなくなったフロンターレ。中野クロスに森本など、決定機を作るも決まらない。

90分、後半出場の中野に代えてまさかのエドゥ。フィードを収めて左に展開したり、DFと駆け引きしてラインをおし下げたり、効果はあったように思います。印象的だったのは、意地でも苦し紛れのクロスは上げず、パス交換で1枚はがしてから上げていたこと。クロスが読まれにくくなるし中の駆け引きも有利になるけど、自信あるなぁ…と。カットされたら試合終了な状況だし。

車屋のファークロスを悠が競って折り返し、森本。追いつくのはマジですげぇ。悠様様、森本さんおめでとう、という感じでした。エドゥも気持ちが見えてよかった。

負けなかった、勝ちたかった

広島戦ではSB、SH、ボランチがあれだけ集中して、CBも体を張って零封した。のと比べると、まったく違うチームのような試合運びでした。相手チーム次第での対応の違いと言ってしまえばそれまでだけど、勝ち点を積み重ねていくうえで、勝つためのバランスを試合中に見定めて調整していくのは必須。優勝するのであれば、なおさら。誤審もあったし、リードされる時間帯が長かったので難しい試合だったけれど。決定機を逸さないという方向性もあるけど、やはり確率論の世界でもあるので。いかに相手より1点多くとるか、そのバランスの見極めと戦う気持ちが、勝率を大きく押し上げるものと信じます。

さぁ名古屋戦!応援行こう!