【J1 1st第6節vs鳥栖】劇勝。中盤について。

 現地でガッツポーズが止まらなかった筆者です。マジで興奮しました。原川から田坂へのパスも、田坂から悠への繋ぎも、どちらも余裕のあるものではなかったですが、だからこそ相手DFを釣り出して悠のデュエルからのスーパークロスに繋がった。勝負の綾は怖いものです。。あそこであの精度の仕事ができる悠と、最後の最後で決め切る嘉人は役者だなぁと、つくづく思いました。あと、田坂の前線での間で受ける動きの重要性も再認識しました。真ん中入ってきてフリックや縦パスというのは甲府戦や鹿島戦でも得点に繋がったところ。どれも手数をかけない速攻ではありましたが、一発が狙えるポジション取りをし続けているということだと思います。

さて。それはそれとして。今回はこの試合のなかで出てきた中盤の形についてそれぞれ触れていきたいと思います。

スターター。憲剛トップ下にネットと僚太のボランチ

f:id:maplesyrup16gal:20160412205405j:image大久保ワントップに憲剛トップ下、左にノボリ、右に悠。その下に大島とネットを並べた布陣。守備的にはネットか大島(だいたいネット)がバイタルとサイドのスペースをケアしつつ、攻撃面では良い形で憲剛に預けてフィニッシュまで持ち込む意図が感じられます。攻撃の枚数は両SBおよびボランチの片方が上がれば足りないということはないですし…打開できるという公算があったのかもしれません。
しかして現実は、鳥栖の攻撃は単発ながらもセットプレーも含めて確実に脅威であり続け、攻撃面では鳥栖の前プレが両ボランチにかかる中で選択肢を限定され、前線に届く頃にはほうほうの体という塩梅でした。大島とネットの間で1枚でも2枚でも剥がせれば、サイドにしても中央にしても前を向いて良い形でボールが持てるのですが、前プレで時間が限られる中でネットと大島のパス交換は殆ど見られず、CBからボールが出て行かなかったり、果てはエドゥが持ち上がったり。原因の一つはネットのプレーテンポにあると思いますが、大島もエドゥに対して強い要求が見られず消えている時間が多かったのが残念でした。大島はプレーテンポが速い中でこそ活きる選手ですが、周りにそのテンポを強く要求ません。これはU23でも同様だと思いますが、どんな状況でもボールに近づいていって周りの選手に指示を飛ばしまくるようなプレゼンス面での成長があれば、能力が十分に発揮されコンスタントに存在感を示せるようになるように思います。チーム的にサイド攻撃に脅威がないので、中盤での崩しを期待せざるを得ません。

憲剛とネットのボランチ。ネットの今後は。

大島を右サイドに回して憲剛とネットのダブルボランチに変更。ほどなく大島から田坂にチェンジして後半へ。憲剛がCBの間に入って一番底でビルドアップに加わり、ネットが前に残る形が増えました。SBを経由してネットに入る形が多かったですが、プレスに負けて危ないロストが数発でました。
ネットの問題はまず、ボランチとしては右足の自由度が低いこと。ターンにしてもショートパスにしても基本的にヤバいと思ったら左足でやろうとするので、タイミングや方向を読まれやすい。CKが右サイドにこぼれた際、無理に左足でターンしようとしてロストしたのは典型例でしょう。関連して、ボールコントロールが結構大味で、タッチ間隔が長いのでパスを出せるタイミングが少ないこと。受け手にもネットのタイミングを強要する形になりますし、よほどチームとして慣れて来ないと連携に組み込むのは難しそうな印象を受けました。特に狭いスペース、限られた時間での連携からの打開が持ち味の大島との組み合わせについては殊更宜しくないと、現時点では言わざるを得ません。大島がネットを使い切るような働きかけが必要だと思います。もうひとつ、強いパスや体躯を活かした深い切り返しで乗り切ろうとすることが多いですが、その選択肢自体がプレスの激しい中盤ではリスクの高いものであることが多いです。これはアヴァイでのプレー動画でも感じるところなのですが、プレッシャーがない状況でのプレーはスケールの大きいものが期待できますが、トラップやターン一発での局面打開を狙いがちです。そうでなければ、無難にサイドにはたく形に終始してしまっているのが現状だと思います。おそらく、一番活きるのはロングカウンター主体のサッカーでのフィルターまたは溜めどころとしての配置だと思うのですが、今のフロンターレの中盤のスタイルにフィットするには時間がかかりそうです。何か得点に直結する必殺技のようなものがあれば、チームがそれに合わせることも考えられますが…あるいは、潰し屋としての献身的な仕事人になってくれるか…?スタミナの問題が一時的なものであれば、それもあり得るかもしれません。
ネット×憲剛の時間が長く、どうにも出口の見えない状況が続きました。ネットを引っ張った風間監督の思惑は正直測りかねます。フロンターレのサッカーに慣らすための投資ということだったのでしょうか。であれば、最後の最後で勝ち点3を拾えたことは望外の結果でしょう。ネットの今後の奮起に期待です。

原川×憲剛。『普通』にかける大きな期待。

さて、森谷を差し置いての原川の登場は83分。10分間でしたが、一定水準のプレーを見せてくれたと思います。憲剛が試合後コメントで「すごく特徴があるわけじゃない。でも入れたら普通にやってくれる。」と言っています。大島のような細かさはないですし、森谷のようなフリーランの献身性も現在のところ感じませんが、前にパスをつけられますし、遠いところもある程度見て精度のあるボールを供給できる。ビルドアップもそつなくリズムに入って捌くし顔も出せる。サイズ的にも谷口ほどではないものの、Jリーグではビハインドはなく球際の守備に穴が空くことはない。トップ6レベルの試合で中盤で違いを出すには物足りなさを感じるかもしれませんが、誰と組み合わせてもまずまず計算が立つというのは貴重な存在になるのではないでしょうか。憲剛の持つ試合に対する観察眼や、それに基づくリスクテイクの思い切り、ギアアップなどメリハリのあるプレーが試合で出てくれば、素晴らしいボランチになる気がします。特に大島との組み合わせで、切磋琢磨しながら次代の中盤として期待大です。
こうしてみると、今シーズン、ボランチとしてプレーしたのは憲剛、大島、森谷、谷口、ネット、原川と6人もいることになります。憲剛は別格の存在感を放っていますが、相方の座を射止めるのは誰になるか、注目です。大島のコンディションが上がれば憲剛×大島は既存の形。3バックを採用すればこれに森谷を加えた3ボランチのような形も昨年では2ndの浦和戦などでありました。4バックでの守備を煮詰めている過程だと思うので、3バックが今シーズン出てくるかわかりませんが…。大島のコンディションが上がらない場合のチョイスが森谷になるか原川になるか。今節の憲剛トップ下+2ボランチの形でネットの替わりに原川が入ったら、攻撃面では面白いような気がします。4月の強豪相手のどこかで見てみたいなぁ。谷口は車屋不在の中、4バックの左で定着しそう。ラームのような存在になってくれないかな…と期待しています。右利きなので本来なら右SBのほうがいいはずなんですが、クロスの精度が今一つなのと、遊撃隊員エウシーニョとの形が作れていないのが問題です。左サイドのほうが型のある攻撃になることが多いので、思い切りよく行けている印象があります。

課題は多いのに、勝てている。

最後にもひとつ。SHが中に絞る関係上、守備時のSHとSBの間のスペースと受け渡し、あるいはSBの裏のスペースは鹿島戦から引き続き課題です。幾度となくいい形で1対1に持ち込まれていましたし、いいクロスも上がっていました。特に、バイタルを通過して逆サイドに展開されたときのサイド守備に、枚数が揃っていても度々綻びが見えます。湘南戦や昨年と比べれば、ネガティブトラジションが機能するケースが増えており長駆戻ってのディフェンスの形は減っていますし、そもそものポジション的にもSBが上がった場合はボランチ1枚は引いていたりとリスク管理をしようとしているのは感じます。
個人の関係での修正範囲内には来ていると思うので、すごく期待。
ここまで4勝2分の1位。チームとして熟成された結果というよりは、タレント力で勝てている。前線で大久保に加えて悠が絶好調なのと、何だかんだ田坂の存在。憲剛も絶好調。それに加えて最終ラインのソンリョン、エドゥ、奈良がこれまでにない粘りをチームにもたらしてくれている。ここにさらなる上積みが出来れば、 マジでタイトルが見える…!
頑張れ。マジ頑張れ。フロンターレ。井川と小宮山が残念ですが、これ以上の怪我が出ないよう、お祈りします。。
 
 
 

【J1 1st第5節vs鹿島】トップ6の戦い

ちょっと書くスタイルを変えないと続かない状況になってきました。

中断明けに、人が減り。

f:id:maplesyrup16gal:20160412204337j:image大島・大久保・車屋抜きのスタメン。第4節まで不動だった面々が鹿島戦で不在というのはとても痛い。中盤で底からリズムを作る大島と、1.5列目に降りて高い位置での組み立てに貢献していた大久保がいないことで、中を崩す、あるいは中で押し込みづらくなるのでは、という懸念。さらに、中が詰まっているときにここまで「困ったら車屋」的に縦打開のキーになっていた車屋まで不在。これに替わって入ったのは武岡、森本、田坂。

鹿島の前線のクオリティで組み立てが瓦解。

金崎とカイオがとにかく脅威。二人にシンプルにボールが渡るだけで起点になって押し込まれ、特にカイオは手がつけられない状況でした。前線からの守備についても赤崎と合わせて運動量豊富、強度も十分。森谷のところにパスが入るときはだいたい背中に人を背負った形になり、なかなか前を向けない。サイドも1人で勝負するタイプではなく、ビルドアップが厳しいなかでは攻め手がないように見えました。森谷に関しては前半最後には取りどころとして狙われていた感があります。憲剛が一発裏のパスを幾つか狙っていましたが、これが出るときは組み立てとしてはうまくいっていないときと言っていいような気がします。エウシーニョや悠の受け方、トラップのうまさでいくつかチャンスを作れてはいましたが、全体としては苦しい状況でした。(エウシーニョは中盤守備での球際の良さが光っていたように思います。)
それでも守備は谷口のクリアミスからの1失点に留め、ソンリョンと両CBを中心にいい集中力でした。あれだけサイド打開から決定機をいくつも作られての1失点は、相手に助けられたところも大いにありますが…
得点は森谷から田坂への縦パス、さらに悠への裏パスでもたらされました。これは組織云々ではなく個人の呼吸の問題。特に、田坂の間に入ってのシャドーパサーとしての能力と、悠の受ける力によるところが大きい。飛び抜けた何かがなければ、このレベルでは点は入らないということでしょうか。

勝ち点3をやらなかったことが大きい。

後半は森谷に替えてネット。縦パスでいいのが幾つかありましたが、サイドに早くはたきすぎて攻撃が単調になっていたような気がします。懐が深くて取れそうにないボールが取れたりキープできたりするのはいいですが、ショートパスの角度を作るのに時間がかかっていて連携での崩しは出来ないなぁと感じました。タイミング的に受け手にとって選択肢の絞られる出し方が多いです。あと、ターンの判断がリスキーなものが多くて連続したプレスを受けると危ないロストをしたり。縦パスも結構お祈り系が多い。うーん、伸び代。
 75分回ると武岡もいよいよきつくなってきて、いつ点を取られるかという状況。エウシも獅子奮迅の頑張りでしたがさすがに限界で攣ってましたし。攻撃陣も、サイド打開のキーとして期待のかかる中野がどうにもスッキリしない。中野はサイドアタッカーとしては間合い管理で一瞬外す、というのが独力では今のところMAXでしょうか。SBの追い越しを天秤にかけてのカットイン、というテンプレを越えねばならんですね。スピードがあるタイプではないので、剥がしたタイミングでの判断が大事なのですが、現状は迷いが見られがち。サイドでなければ真ん中の選手として台頭せねばなりません。3枚目として登場した大久保でしたが、こちらも独力で違いを見せるには至らず。不十分な状況からのミドルに留まりました。中盤に下りるわけでもなく、途中出場で一発を狙うには自身のコンディションもチームの状況も厳しかったというところでしょうか。
それでも、鹿島には点が入らなかった。彼ら自身の決定力によるところもありますが、ソンリョンとCBの粘りによるところも大きかった。ブレずに、自陣を守り抜く姿勢と気迫はチームに確かに伝わっていたと思います。SHとSBの間のスペースをいいように使われるのは両サイドとも大きな課題ですが、とにかく引き分けという結果を持ち帰れたというのが大きい。
今節の鹿島は非常に良いチームでした。前線からのプレスをベースにした固い守備は普通の攻撃では破れる気がしませんでしたし、攻撃面でもカイオと金崎を中心に良い形をガンガン作れる。このコンディションが1シーズンもつのなら、間違いなくトップ6どころではなく、優勝候補でしょう。逆に川崎としては、必ずしもベストではない状況の中で彼らに勝ち点3を持ち帰らせなかったことが大きい。ネットと武岡をトップチームで試しつつの結果としては、御の字の結果と言えるのではないでしょうか。

層の厚みが必要。守備力の高い相手FWの処方箋も、必須。

今節は大島も車屋もいない状況で、どのように試合を作るかというのが懸案でした。結果として内容としてはやられた試合でしたが、勝ち点1を持ち帰った。これはこれで今季のフロンターレの力として評価すべきところだと思います。薄氷の結果でしたが、上位陣の試合はそんなものと捉えたほうがいいでしょう。今後としては、いかにベストでない布陣であっても相手に怖さを感じさせられるくらいのチームにできるか。最終ラインでの組み立てが阻害される状況では、中盤かサイドのどちらかに武器がある状況が作れれば優位が作れますが、そうでなければDFの粘りと前線の煌めきに期待する試合展開にならざるを得ないのでしょう。攻撃で個として違いを作れるのは悠と、大久保。彼らにひたすら祈る展開の試合が少しでも減るといいのですが…

さて、鳥栖戦書きます。